大学生の日常。

ゲーテについて

先日ゲーテJohann Wolfgang von Goetheの詩の一つ、AM FLUSSEを

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訳したんですが、どうも理解が浅いような気がして、ゲーテ作品を多く日本に輸入してきた池内紀さんの「ゲーテさんこんばんは (集英社文庫)」を読んでみました。

 

するとどうでしょう、文豪ゲーテと聞いて太宰治森鴎外といった日本人が頭に浮かぶ「文豪」のイメージからはかけ離れた、まるで演劇のような人生を送っていたことが読み取れます。

断っておくと私自身はあまり文学に親しみがなく知識もないため、素直に感銘を受けたところを中心に取り上げていきます。

 

ゲーテはまず当たり前のように多彩で天才、幼少期から藝術~学問にかけて様々な教養を身につけているため、世に出てから息絶えるまで何かを生み出し続けます。万能人間といえばレオナルドダヴィンチですが、わかり易い伝説がないだけで一人の人間が残した実績の数としてはゲーテは十分に万能人といえるくらいのものを残しています。

 

ゲーテの人生は「ファウスト」に色濃く映し出されています。グレートヒェンを巡る話や、二章の財政問題なんかは、ゲーテの人生経験や見聞が多く取り入れられているようで、特に女性関係なんかは、ゲーテがいく先々で年齢や既婚かどうかなどを意に介さずに魅力的な女性に求愛していきます。しかし関係が固まってしまいそうになるとそそくさと逃げ出すので、立場を考えてのことでしょうがなかなかに勝手な男であることがわかります(笑)

まあ現代の日本のように世間に厳しく監視されない限りは、多くの男性は権力を持つほどこうなるのだろうという気もしますが!

 

ゲーテは公務の合間を縫って、時には周りを欺いてまでしばしば旅に出かけました。地図はあまり手に持たずに、ひたすらに書記を残したというのがゲーテらしいです。私はイタリアに行ったことがないので、ゲーテの愛したヴェネツィアを含む「イタリア紀行」にいつか行ってみたいですね。

 

読んでいて「あっ」と思ったことをいくつか。ゲーテはしばしば「内的世界」という言葉を口にしたようで、才のある人間が社会に受け入れられず、内的世界に閉じこもってしまうことに懸念を示しています。それを防ぐためには彼らの紡ぐ話を聞き入れ、受け入れてくれる存在が必要としているというのですが、この論理にすごく私は納得させられました。

ゲーテも当時の小国ワイマール公国の執政官だったようですが、当時の彼の心を支えたのは、七つも年上の夫人だったそうです。

 

現代の国々はどうでしょうか。今大国と呼ばれる国々、代表としてアメリカ、ドイツ、中国としましょう。それぞれの国の政治体制は大きく異なるものの、才のある人間には惜しまず大金を払い、現代の国力である会社の発展に貢献させています。ドイツは多数の反対の中大規模な移民政策を行い、真っ当に生きていけるような教育を受けさせるような制度を整えていっています。

しかしそのような大国ですらいまだ問題が多くある中、小国での諸問題の根深さは言うまでもありません。現代の日本は「老人と小官僚がのさばって」いない国なのでしょうか。若人をと才を受け入れる制度を整える、つまり国を若返らせ、若者に寛容になることが、いま最も必要なことではないのかとこの一説を見て感じました。

 

 

ゲーテの面白いところは死してなお物語が終わらないところです。

恋愛作家、官僚、文豪、科学者など多くの顔を作ったゲーテは後世に語り継がれますが、彼が面白いのは死んでから批判の対象になることです。批判は称賛よりも注目の対象にされるので、いかにゲーテが当時影響力の強い人物だったかがわかります。

また、一次大戦終戦頃にはゲーテの思想にちなんだ学校がプロイセンに作られますが、その思想はナチには受け入れられず、批判の嵐を受けたのちに閉校となります。しかし、やり玉に挙げられるのは当時の関係者ばかりで、ゲーテ本人がターゲットになることはなかったようです。やはり当事者の方が注目度は高い、というのもあったのでしょうが、批判の対象にならなかったというのは当時の人間なりの歴史的人物に対する敬意が感じられないでもないです。

わたしは有名になった「もっと光を。」よりも最後にゲーテの絶筆である

 

戸口を掃除しよう

すると町はきれいだ

宿題をちゃんとしよう

するとすべて安心だ

池内紀

 

のほうがしっくりきます。

物々しく描かれた作品よりも、まじめで、そのまじめさよりも時々欲深さが勝ってしまうゲーテその人の人間性が静かに表れていると感じるからです。

 

長い文章になりましたが、これでゲーテの詩ともっと真剣に向き合えそうです。

読んでくださってありがとうございました!もし間違ったことを書いていましたらTwitterかコメントで教えて頂けると助かります。